学校を出よう！5巻読了

6巻を読了後まとめて、と思っていましたが、自分の感想を整理する意味でも各巻ごとに感想をアップしていきたいと思います。
「EMP」という特殊能力（超能力と置き換えてもいいでしょう）を身に付けた学生が集まる第3EMP学園を舞台に、不可思議な現象の発生と解決を楽しむミステリ要素の混じったファンタジーです。
5巻と6巻は当シリーズ初の連作となっています。

さてさて、今回の第3EMP学園では、なんと上位世界の存在が今まで以上にはっきりと物語に介在してきます。なんせ、はじまりが「アスタリスク」という上位世界者の介在からスタートするくらいです。この「アスタリスク」ですが、日本語訳を当てはめると「自動干渉機」です。自動というだけあり、2巻で星名サナエ（音透湖）として登場してきた上位世界者である「インターセプタ（年表干渉者）」や4巻で登場した「インスペクタ（高等観察院）」より機械的イメージが非常に強い描かれ方をしています。事件は3巻と同じように、蒼乃木類のルームメートの異変から始まります。4巻終了後、類に「雨森日世子」というルームメイトが出来たのですが、このルームメイトがなんと「死体」となってしまったという、EMP学園としても異例の事態が起こります。息をしておらず、全く生体反応はしめさない。にも関わらず体温はあり、傷をつけてもたちどころに治ってしまう脅威の治癒力を持つ存在。勘のいい人であれば、この時点で正体に思い当たる節はあるでしょう。「死体」でありながら、「死体」でないと、第3EMPの誇る2台巨頭である縞瀬真琴そして宮野秀策は断言しますが、理由は以下の通り。・真琴　精神活動を全くしていない、イコール死体。ただし、体温や回復力から死体でありながら死体でない。・宮野　脅威の回復力、恒常性をもつ存在であり、死んでいないし生きてもいない存在。類の住む女子寮D寮を中心に、第3EMP高等部のみに起きた異変なのですが、4巻までは全知たる真琴にすら事の真相がわからず、本気で高崎佳由季に頼り切るという有様からも、事の大きさが伺えます。しかし、ここで今巻から登場した「アスタリスク」が物語に直接介在します。佳由季に泣きつく真琴のシーン直後に「介在」を実行し、なんと真琴にこれは一種の「呪い」であるという認識を植えつけた上で物語を改変してしまいます。その後も宮野が上位世界の存在を感知した際に、その事実を無くす為に「介在」（最終的にはどのように介在しても宮野の感知を防げないとインターセプタからの忠告で介在をキャンセル）してきます。この温かい死体、夜になると動き出す吸血鬼であることがわかります。しかし、宮野の弁を借りれば「吸血鬼はその概念じたいが虚構であり、ゆえに吸血鬼は存在しない」という二律背反が提示されたまま、6巻へと続くことになります。ちなみに、宮野の言葉の根拠は吸血鬼は他者の血を吸い、生命を維持するとともに仲間を作り出すことが非現実的ということです。つまり、最初の吸血鬼が血を吸い仲間を作ります。すると翌日は2人の吸血鬼が血を吸い4人の吸血鬼が誕生。このねずみ算方式でいくと34日後には全人類が吸血鬼と化す計算になります。しかして、現在人間は地球上を支配者として君臨しています。つまり、吸血鬼は存在しえないということです。吸血鬼騒動と平行して、反体制組織の首魁である抜水優弥もきな臭い動きを見せていますが、全てが6巻への複線となり、5巻では全く謎の原因、理由、上位世界者の介在目的が明らかにされていません。現在は6巻も発売されていますが、発売当時であればかなり先が気になる展開です。刊行ペースでは、翌月に6巻が発売されたので、読者としてのもどかしさはあまり感じずにすんだでしょう。この辺は、現在発売待ちの「涼宮ハルヒの驚愕」は逆に発売が前巻刊行2ヵ月後の予定が発売未定になったことからもわかると思います。ともあれ、謎は全て6巻で明らかになります。次巻を楽しみに読みたいと思います。